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東京地方裁判所 平成3年(刑わ)258号 判決

主文

一  被告人両名をそれぞれ懲役一〇か月に処する。

二  被告人両名に対し、未決勾留日数中一八〇日をそれぞれの刑に算入する。

三  被告人両名に対し、この裁判確定の日から三年間それぞれその刑の執行を猶予する。

四  被告人両名から、押収してある白色スニーカー片方(〈押収番号略〉)及び同茶色スニーカー一足(〈押収番号略〉)を没収する。

五  訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(犯罪事実)

第一  被告人A及び同Bは、平成三年一月三〇日午前九時四〇分過ぎころ、被告人Aにおいて、氏名欄に「C」、住所欄に「渋谷区(以下略)」と自ら虚偽の記載をした参議院発行の公衆傍聴券(番号七三)を、被告人Bにおいて、氏名欄に「D」、住所欄に「東京都世田谷区(以下略)」と自ら虚偽の記載をした参議院発行の公衆傍聴券(番号七四)を、それぞれ携帯し、東京都千代田区永田町一丁目七番一号所在の参議院(管理者参議院議長土屋義彦)西通用門において、各自その携帯する傍聴券を、その氏名、住所欄の記載が虚偽であるとの事情を秘して、立番勤務中の同院衛視に提示した上、同門から同院に立ち入って、同院本会議場傍聴席まで至り、もって、故なく人の看守する建造物にそれぞれ侵入し、

第二  被告人両名は、いわゆる湾岸戦争に関して、湾岸平和基金に対し九〇億ドルの追加支援を行うとともに、避難民輸送のために自衛隊機を派遣するなどの政府の方針に反対する意図をもって、右方針に関する質疑と答弁が行われていた同日開会の第一二〇回通常国会参議院本会議の議事を妨害しようと企て、共謀の上、同日午前一一時一四分ころ、内閣総理大臣海部俊樹が同院本会議場演壇に立ち参議院議員沓脱タケ子の質疑に対して答弁を行っていた際、前記傍聴席において、被告人Bがまず茶色スニーカー一足(〈押収番号略〉)のうちの片方を、次いで間髪を容れずに、被告人Bがもう片方の茶色スニーカーを、被告人Aが白色スニーカー片方(〈押収番号略〉)を、それぞれ右演壇に向かって投げつけた上、こもごも「侵略戦争反対。」などと繰り返し大声で叫ぶなどして、議場を一時混乱状態に陥れ、もって、威力を用いて参議院の業務である議事を妨害した。

(証拠)〈省略〉

一  被告人両名の各公判供述

(争点に対する判断)

第一  威力業務妨害について

一  共謀の成否について

1 〈証拠略〉を総合して、判示第二の行為の際の被告人両名の行動態様を詳しくみるに、被告人両名は、本件犯行時刻ころ、参議院本会議場傍聴席のうちの東側公衆席の前から二列目の長椅子に並んで座っていたが、いきなり、まず被告人Bが立ち上がりながら履いていた茶色スニーカーの片方を、海部首相が沓脱議員の質疑に対する答弁を行っている演壇に向かって投げつけ、それから二秒位のうちに、被告人Bがもう一方のスニーカーを同様に投げつけ、右被告人Bの第二投とほぼ同時に、被告人Aが立ち上がった上、履いていた白色スニーカーの片方を同様に投げつけ、更に、立ち上がった両名は、駆けつけた衛視らに議場から連れ出されるまでの間、こもごも、「侵略戦争反対。」などと繰り返し大声で叫ぶなどしたことが認められる。

右のように、被告人らは、そろって同態様の行為に及んでおり、しかも、両名の靴投げ行為が、二秒程度という極めて短時間のうちに相前後して行われている事実に照らせば、前記被告人Bの第一投に誘発されて、初めて被告人Aが靴投げを決意し、履いていた靴を脱いだ上本件行為に及んだとは到底考えられず、少なくとも、右靴投げ行為の以前に被告人両名の間で本件のような行為に及ぶことについての共謀が成立していたことは明らかといえる。

2 しかしながら、被告人両名の間のこの共謀が、両名の参議院への立ち入りに先立って既に成立していたことまでは認められない。検察官は、かかる事前共謀の成立を主張し、これを裏付ける事情として、①被告人両名がいずれも参議院への本件立ち入りに当たり、傍聴券に虚偽の住所、氏名を記入していること、②被告人両名がいずれも、いわゆる湾岸戦争に関する政府の方針に反対の意見を有しており、また、右同様の意見をその機関紙等で標榜する統一共産同盟なる組織に関係する者であること、③本件当時、被告人Aは約八万円、被告人Bは約五万円と比較的多額の現金を所持していた反面、身元を特定する物を全く所持していなかったことなどを指摘するが、まず、右②、③の事情は、検察官主張の事前共謀の成立を推認する間接事実として、それほど大きな意味を持つものとは考えられず、また、①の事情についてみても、弁護人は、被告人らが傍聴券に虚偽の氏名等を記入したのは、参議院当局には傍聴人に対して真実の氏名等の開示を要求する権限はないとの考え方に基づき、右記入を求める傍聴手続への抗議の意思を表明するためであったと理解し得る旨主張するところ、確かに右事情から弁護人主張のような想定をすることも可能であるのであるから、これまた前記趣旨の間接事実としてそれほど重きを置くことはできないというべきである。このように、検察官指摘の①ないし③の事情は、いずれもその有する推認力は強力なものといえないところ、他方、関係証拠によれば、被告人らが傍聴席に着席した後にまず行われた公明党・国民会議所属の鶴岡洋参議院議員の質疑とこれに対する海部首相の答弁においても湾岸戦争問題が取り上げられたが、この答弁の際には、被告人らはなんらの行為にも出ず、被告人らが本件靴投げ等の行為に及んだのは、被告人らが傍聴席に着席し参議院本会議の議事が始まって一時間以上も経過してからのことであるとの前記推認にはマイナスに働く事情も存することが認められるのであって、これらを勘案すると、本件証拠関係のもとでは、検察官主張のように本件立ち入り前に既に本件靴投げ等に及ぶことの共謀が成立していたと認めるには合理的疑問が残るといわなければならない。

二  威力業務妨害罪の成否について

弁護人は、被告人らの判示第二の行為につき、被告人らの行為は、参議院の業務を妨害する抽象的危険すらなかったのであるから、刑法二三四条にいう「威力」を行使したものとはいえず、右行為の著しい軽微性に鑑みれば、右行為には軽犯罪法一条三一号の罪に問擬できるだけの可罰的違法性も備わっていない旨主張するので検討するに、〈証拠略〉を総合すれば、東側公衆席の中央前から二列目の長椅子に並んで座っていた被告人らは、海部首相が議場演壇で答弁を行っていた際、突如として、傍聴席から演壇(被告人両名の所在位置から演壇までの直線距離約21.3メートル)に向かって、各々履いていたいずれも合成皮革製のスニーカーを合計三個続けて投げ込んだ上、手を突き上げたりしながら「侵略戦争反対。」などと大声で叫び、駆けつけた衛視らに制止されながらも抵抗し続け、傍聴席から連れ出されるまでしばらくの間、同様に繰り返し叫んでいたこと、右三個のスニーカーのうち、被告人Bの投げた茶色スニーカー片方は演壇前の速記者席外壁に当たってその前の床に落ち(前記所在位置から速記者席までの直線距離約19.3メートル)、同じく被告人Bの投げた茶色スニーカーのもう片方は速記者の頭上近くをかすめて演壇の正面上部に「ドーン。」という音を立てて当たり演壇と速記者机の間に落ち、被告人Aの投げた白色スニーカー片方は速記者席のすぐ後ろ辺りに落ちたこと、その結果、議場内では、多数の議員が後ろを振り返ったり、声を発したりし、中には、立ち上がって後ろを振り向いたり、大声で「逮捕しろ。」などと叫ぶ議員も出るなどかなり騒がしい状態になったこと、答弁中の海部首相は、一瞬答弁がよどみ、すぐに答弁を続けたものの、その後も傍聴席の方に上目づかいに目をやるなど被告人らの様子をしきりに気に掛ける様子が見られたこと、当時、演壇後方の参事席に座って海部首相の答弁内容を確認する任にあたっていた同院議事部議事課長吉岡恒男及び同部議案課長石堂武昭は、右のような異常事態突発による驚きと議場の騒がしさなどのため、首相の答弁の一部を聞き漏らしたことがそれぞれ認められる(なお、弁護人は、参議院職員らの各証言につき、一部事実と食い違う点やあいまいな点を指摘し、各証言の信用性に疑問を呈するが、弁護人指摘の点はいずれも単なる記憶違いなどとして理解し得る程度のものであり、証言自体の信用性を左右するようなものではない。また、他に、これらの証言の信用性を疑わせる事情も認められない。)。

右のような被告人らの本件行為のうち、靴を投げる行為は、靴の形状や材質、投げられた方向、現に到達した地点、前記の状況から窺われる投げられた靴の勢いなどを考慮すると、海部首相あるいは演壇付近にいた速記者等の参議院職員や議員らを直撃し、当たり所によってはこれらの者に怪我を負わせるなどの可能性が十分にあった危険な行為であるといわざるを得ず、また、本件一連の行為によって、前記のように、議場が一時騒然とした状態となり、現に議事妨害の結果が生じたことも優に認められる。これらを考慮すれば被告人らの本件行為が、人の意思を制圧するに足りる勢力、すなわち、「威力」を用いたものであることは明らかといえる。

したがって、被告人らの右行為は、威力業務妨害罪を構成すると認められるのであり、弁護人の前記主張には理由がない。

第二  建造物侵入について

一  建造物侵入罪の成否について

弁護人は、被告人らの本件参議院への立ち入りにつき、その目的において違法ではなく、かつ、態様も平穏であるから建造物侵入罪は成立しない旨主張する。

まず、被告人らの本件立ち入りの目的の点についてみると、参議院への本件立ち入りに先立って被告人らが本件威力業務妨害の共謀をしていたとは認められないことは前述のとおりであり、また、前述したところに照らせば、被告人Aあるいは被告人Bが独自に右目的を有していたとの事実も認められない。さらに、関係証拠を検討しても、被告人らにその他の違法行為に及ぶ目的があったと認めることもできない。したがって、弁護人の主張中、本件立ち入りにつき目的における違法がなかったとの部分は首肯できる。

しかしながら、違法行為に及ぶ目的をもっての立ち入りでないとしても、当該建物の性質、使用目的、管理状態、管理権者の態度などからみて、現に行われた立ち入り行為につき管理権者がこれを容認していないと合理的に判断されるならば、当該立ち入り行為が建造物侵入の罪を構成するのはもちろんである。そして、以下に検討するところによれば、被告人らの参議院への本件立ち入り行為は、管理権者の容認していないもので、これが建造物侵入罪を構成することは明らかである。

1 最初に、被告人らの本件立ち入りの状況をみるに、〈証拠略〉によれば、以下のような事実が認められる。

被告人両名は、本件当日午前九時四〇分ころ、連れ立って参議院別館一階の傍聴受付窓口を訪れ、一般傍聴人として当日の参議院本会議の傍聴を申し込み、係員から切離し式の正券と副券が一体となった公衆傍聴券各一枚の交付を受け、その場で各々が右傍聴券に氏名、住所等を記入した(参議院傍聴規則(以下「傍聴規則」という。)一条二号は、一般傍聴人が傍聴にあたり履践すべき手続として、傍聴券に住所、氏名、年齢を記入すべきことを規定している。)が、右各氏名、住所の記載は虚偽の内容であった。その後、被告人両名は、同別館を出て各自参議院西通用門から同院内に立ち入った。その際、同西通用門で立番中の衛視に対し、右各傍聴券を提示して確認を受けた。その後被告人らは、国会後庭を通って、参議院本館の傍聴入口から同本館内に入り、地下一階の傍聴券点検所において、衛視による傍聴券記載事項の点検を受け、さらに同階にある携帯品預所において、被告人Aが持っていた新聞とマフラーを預け、身体検査所において、両名とも衛視による所持品検査を受けた後、傍聴人検査所において、衛視からそれぞれ傍聴券正券に検印を受けた(一般傍聴人が右検査及び検印を受けるべきことは、傍聴規則一条三号が規定している。)。そのまま被告人らは三階傍聴席に向かい、三階傍聴席入口において、立番中の衛視にそれぞれ傍聴券正券を示してその点検を受け(一般傍聴人が右点検を受けるべきことは傍聴規則一条四号が規定している。)、傍聴席である東側公衆席内に入った。

2 ところで、右にみたように、被告人らが傍聴規則に従って傍聴券に記入した氏名、住所はいずれも虚偽であったのであり、被告人らは、このような傍聴券を携帯して参議院内へ立ち入ったのである。しかして、参議院へのかかる態様による立ち入り行為については、右認定にかかる傍聴希望者らに対する度重なる厳重な点検、検査の状況からしても、参議院の管理権者たる参議院議長がこれを容認していないことは、すでに明かというべきであるが、さらに、この点を国会法等法令との関係で検討するに、国会法及び参議院規則は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である国会の権威と秩序保持の見地から、傍聴に関し、銃器その他危険なものを持っている者、酒気を帯びている者その他取締上必要があると認められる者の傍聴を禁ずること(参議院規則二二五条)、議員以外の者が議員内部において秩序をみだしたときには、議長はこれを院外に退去させることができること(国会法一一八条の二)などを規定し、傍聴人によって、議事の妨害その他院内の秩序が害されることを厳に防止しようとしており、これを受けて、傍聴規則は、一般傍聴人による傍聴の手続等を詳細に規定している。このような国会法等関係法令の全体の趣旨からすると、傍聴規則一条二号で傍聴券への氏名等の記入を要求している具体的な趣旨は、主として、自らの身元を明らかにさせることによる心理的強制力によって、傍聴人による議事妨害その他の院内秩序の侵害を防止しようとするものと解されるのであり、かかる趣旨に照らすと、傍聴券に記載されるべき氏名等が真実のものでなければならないことは、自明のことといえる。

そして、傍聴規則は、議員運営委員会に諮った上で、参議院議長が定めたものであり、同議長の意思を表すものにほかならないから、参議院の管理権者たる参議院議長は、傍聴規則一条二号によって、所持する傍聴券に真実の氏名、住所等を記入していない者の院内への立ち入りを許さないとの意思を外部に表明しているものといえる。

この点、弁護人は、傍聴人には身分証明書の携帯が義務付けられておらず、実際上、傍聴券に記載された氏名等が真実か否かを衛視らが確認することは不可能なのであるから、傍聴規則は、傍聴券に真実の氏名等を記載することを要求するものではない旨主張する。しかしながら、傍聴規則が傍聴人に対して身分証明書の携帯を義務付けていないからといって、衛視らにおいて傍聴券に記載された氏名等の真偽を確認することが全く不可能であるということはできないし、また、衛視らにおいてそのような確認を行うことを傍聴規則が全く予定していないということもできない。むしろ、傍聴規則一条四号、八条、九条等によれば、傍聴規則は、そのような確認を行う方法については特に定めていないけれども、必要によっては衛視らがそのような確認を行うことも当然予定していると解し得る。弁護人の主張は、その根拠が十分でなく、到底受け入れられない。なお、弁護人の主張が採り得ないことはこれによった場合、次のような不当な結果を導くことからも明らかといえる。すなわち、所論の結論に立つと、衛視らがたまたま虚偽の氏名等を記載した傍聴券を携帯して院内あるいは議場傍聴席に入ろうとする者を発見しても衛視らはその者の立ち入りないし入場を拒否できず、そのまま立ち入りないし入場を許さざるを得ないことになるが、秩序維持の見地から制定された傍聴規則が、一条二号の規定の存在にもかかわらず、このような事態を許容しているとは全く考えられないのである。

3  以上より、被告人らの参議院西通用門からの同院内への本件立ち入りは、虚偽の氏名等を記入した傍聴券を所持していたというその態様において、管理権者の意思に反するものと認められるから建造物侵入罪の成立が認められる。

(なお、弁護人は、傍聴券への氏名等の記入は、最終的に参議院本館地下一階の傍聴券点検所の前にある傍聴券記載台で行えば足り、西通用門を通過する段階では傍聴券の氏名欄等が白紙のままであっても通過が認められる扱いなのであるから、すくなくとも西通用門通過の段階では、傍聴券に虚偽の氏名等が記載されていても、立ち入りが管理権者の意思に反することにはならない旨主張する。しかしながら、西通用門において、傍聴券の氏名欄等が白紙のままでも通過を許すという扱いは、その後、傍聴券点検所を通過する前に、真実の氏名等が記入されることを予定してのことであって、西通用門通過時点で既に虚偽の氏名等が記載された傍聴券を所持する者の立ち入りまて許容するものでないことは、傍聴規則一条二号の前記のような趣旨に照らして明らかと言うべきである。)

二  共謀の成否について

検察官は、傍聴券に虚偽の氏名等を記入した上での参議院への立ち入りについて共謀があったと主張するが、まず、傍聴券に虚偽の氏名等を記載することについて被告人らが意を相通じていたことを証する直接証拠は一切存在しない。そこで、問題は間接証拠による推認が可能かどうかということになるが、この点に関する間接証拠としては、被告人らが、連れ立って参議院別館傍聴受付窓口を訪れたこと、被告人らが同窓口で交付を受けた傍聴券に揃って虚偽の氏名、住所を記載したこと、被告人らが、連れ立って西通用門から参議院に立ち入ったことなどを指摘できるところ、これらを総合しても、被告人らがいずれも反権力的信条の持主であることを考えると、被告人らがそれぞれ独自に傍聴券に虚偽の氏名等を記載した疑いは未だ払拭できないのであって、結局、右虚偽の記載をすることについての被告人ら両名の意思の連絡を認定することはできない。

したがって、本件建造物侵入は、被告人各自の単独犯と認めるほかない。

第三  抵抗権行使の主張について

弁護人は、湾岸戦争に対する我が国政府による財政支出、自衛隊派遣等の政策は、憲法の基本的原理である平和主義や財政民主主義を蹂躪するものであり、憲法の破壊行為というべきものであって、被告人らの本件行為は、右のような蹂躪が、国会の議決あるいは政府の決定という合法的な体裁によってなされようとするのを目の当たりにして、憲法の基本原理の護持と実現を求めた行動であり、講学上の抵抗権の行使に当たるものであるから、違法性が阻却される旨主張する。

しかしながら、仮に、自然法思想に基づく抵抗権の行使が実定法上の罪の違法性を阻却するとの見解に従うとしても、これが認められるのは、民主主義の基本秩序に対する重大な侵害が行われ、憲法の存在自体が否認されようとする場合で、しかも、その不法が誰の目からみても一義的に明白な場合であり、かつ、憲法、法律によって定められた一切の法的手段がもはや有効に目的を達する見込みがないなどの極限的な場合に限られるものと解すべきところ、本件当時、右に述べたような極限的状況が存在しなかったことは明らかであるから、弁護人の主張は採用できない。

(法令の適用)〈省略〉

(裁判長裁判官須田贒 裁判官波床昌則 裁判官大西勝滋)

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